Blog
2023.05.29
特許翻訳
最新知財動向 特許庁ステータスレポート2023からみる気になる今後の動向
4月に日本の特許庁が「特許庁ステータスレポート2023」を公開しました。
今年もドイツ語特許翻訳のトランスユーロならではの視点で、特許庁ステータスレポートをもとに、2022年特許出願状況を振り返っていきます。
2022年日本の特許出願件数はどう変動した?
2013年以降のデータをみると日本国内の特許出願件数は、徐々に減少していましたが、新型コロナウイルスの流行後にさらにガクッと落ち込みました。その後は、少しずつ上昇し、2022年は前年の2021年(289,200件)より330件多い、289,530件となりました。
しかし2019年までは、(徐々に減少していたものの)300,000件台をキープしていたので、今後数年かけてコロナ禍前の数値に戻るのか、はたまた299,000件前後で落ち着くのかさらに動向を注視していきたいと思います。
一方、審査請求をかけて、特許の権利化を行った数「特許登録件数」は2021年の184,372件から201,420件に上昇しており、これは2016年の登録件数に匹敵する数で特許庁でのオンライン面接の積極的な導入等による業務効率化が影響しているかもしれません。
また、出願人にとって気になる審査のスピードですが、審査請求日から最初の審査結果の通知(特許査定、拒絶理由通知書等)が送付されるまでの期間は、平均10.1ヶ月でした(2021年度)。早期審査の場合は申出から一次審査通知までの期間が平均2.3ヶ月、スーパー早期審査の場合は平均0.6ヶ月でした(2022年)。
韓国がドイツを追い抜く 日本以外の出願人数は?
ここで日本の特許庁への「出願人国籍・地域別特許出願件数」を見てみましょう。
2021年では韓国と僅差でドイツが第4位、韓国が5位でしたが、2022年では、過去数年間5千件台だった韓国が7千件台に大幅アップさせてドイツを抜いて4位になり、順位が入れ替わっています。
ドイツからの出願件数について少し詳しく見てみると、2019年が6207件、2020年が5540件、2021年が5965件、2022年が5700件と5千件台後半を推移しています。ドイツ語特許翻訳会社としては、もう少しの件数アップを望みたいところです。
次に、特許の登録件数を見てみると、国外企業の特許登録件数のランキングベスト10に入っているドイツ企業は、相変わらずロベルト・ボッシュ社(Robert Bosch)の1社のみです。ですが、ランキングは2021年の6位(363件)から5位(386件)にアップしています。
今後の特許件数の動向は?
これからの特許出願数はどう変動していくのでしょうか。世界の特許出願自体は、わずかですが引き続き増加傾向にあり、その中でも中国がダントツトップを誇っており、上昇率も他国と比べて高いです。
日本国内に目を向けると、日本でも諸外国に遅れて安全保障の観点から、特許出願の非公開制度が2024年5月までに施行されることが発表されました。
超音速飛行、宇宙、サイバー等の技術などがその対象となるようですが、公開されない特許が、今後の日本国内の出願傾向にどのような影響を与えるのか気になるところです。
ドイツに関しては、中国重視の政策をとっていたメルケル政権からショルツ政権に政権が交代しアジア政策にも変化が見られます。今年3月にはショルツ首相が経済相を始め6人もの閣僚を引き連れて初来日をし、日本重視の姿勢を鮮明に示し世界を驚かせました。経済界からも日独の関係強化に期待する声が高まっており、今後のドイツからの特許出願にも好影響を与えるのではないかと期待しています。
そしてドイツを始め欧州ではいよいよ6月から、統一特許裁判所協定制度が開始され、欧州単一効特許が導入されます。とはいえ、移行期間が長く、オプトアウト等の複雑な制度が絡んでおり、今後の日本からの出願にどのような影響が出るのか、こちらも注目したいところです。
トランスユーロ株式会社では、国内外の特許動向や関連する制度にも注視し、お客様のご要望に沿った翻訳文をご提供することを第一とし、努めて参りますので、日ごろの業務での外内・内外出願用の特許明細書や中間処理書類などの翻訳について何かお困りのことがあれば、トランスユーロ株式会社までどうぞお問い合わせください。
参考
https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2023/document/index/all.pdf
コメントを残す